概要 |
@何について何をする技術なのか?
◆河川・ダム、海岸、港湾等の水域部について、深浅測量を行う技術
・GPSと音響測深機を装備したリモコンボートで水深を測量し、効率的に地形データを取得するものである。
(メカニズム)
・200kHzの音波により測深し、同時にSBASによるDGPSで位置を計測する。
・取得した水深データと位置データはボートから地上局に無線で送り出す(通信半径500m)。
・地上局のノート型PCでデータを収録し、潮位補正と音速度補正を加えて、位置情報を持った水深データに変換する。
(特長)
・遠隔操作で安心:乗船しないので座礁転覆や転落の危険がない。何らかの理由で通信遮断されても船体は自動回帰する。
・易しい搬入出:ボートの規格は幅25cm・長さ106cm・11kgと小型で、一人でも持ち運び可能。
・クリーン性能:電動モーターのため排煙、油流出がなく、低騒音。
・優れた経済性:水深1〜3mの浅所の水深を測るうえで作業制約が少なく、コスト縮減と工期短縮を実現。
A従来はどのような技術で対応していたのか?
◆有人船(傭船)によるレッド測深、ロッド測深または音響測深で対応していたが、下記の問題点があった。
・水深が浅いため、有人船で近づくことによって転覆や浸水等の危険が伴う。
・従来の音響測深機では機器を水面から最浅でも0.5m下に設置しなければならなく、水深データとしては約1m位深しか取得できない。
・レッド測深、ロッド測深では連続的な水深データ取得ができない。
・測量作業を高潮位時に行うことによって、危険リスクを低減したり、水深をより深く取得してきたが、時間帯の制約が大きい(例:大潮時の高潮は2週間に数時間)。
・有人船の動力は一般的に原動機であるため、油分流出リスクを伴う。
・有人船であるため、測量対象域から離れた箇所から移動しなければならない。
B公共工事のどこに適用できるのか?
・地形測量等(深浅測量、堆砂測量、水路測量、施工管理測量)
Cリモコンボート測深機の主な機能
・主要機能:リアルタイムデータ表示機能(位置情報、水深、反射強度、バッテリー残量、航跡等)、データ収録機能、誘導・操船機能
・補助機能:自律走行機能(あらかじめ計画した測線について、自動的に測線上を走行する)、自動回帰機能(ボート本体の流失防止のため、バッテリー残量減少時、無線通信不能時及び手動操作時に電源投入地点への自動回帰を行う)
|
新規性及び期待される効果 |
@どこに新規性があるのか?(従来技術と比較して何を改善したのか?)
・陸上から遠隔操作による1mの小型船に測量機器を装備している。(従来は有人船に装備)
A期待される効果は?(新技術活用のメリットは?)
・水深1〜3mの測量対象域に安全にアプローチすることが可能となる。
・音響測深機の喫水が0.13mであるため水深0.5mまで水深データ取得が可能となる。
・音響測深機を装備しているため、水深データを連続して取得できる。
・リモコンボートの動力は電動であるため、油分流出リスクがなく、低騒音で周囲環境に優しい。
・水深0.5mまで水深データを取得できることから、作業時に比較的潮位の低い時間帯でも水深データを取得できる。
・小型ハンディ形状であるため、測量対象近傍の陸上からアプローチすることが可能となる。
・操船と水深データ取得が同時に行えるために作業員数が少なくできる。
B波影響及び地形による誤差の低減
・波高の大きい箇所では指向角24°、地形傾斜の大きいところでは指向角6°を採用する選択が可能である。
・従来技術でも機器を変更することで対応可能であったが、本技術ではリモコンボート本体のみの変更で簡便性に優れる。
 リモコンボート外観 |
適用条件 |
@自然条件
・流速2m/秒以下、波高1m以下、水深0.5〜80mの水域部
(補足留意事項)
・ボート本体の最大船速が約3m/秒のため、川などの流れのあるところでは操船が困難である。従って、流れ方向に逆走することも考慮して、概ね流速2m/秒以下での使用が望ましい。なお、現地での流速確認は実際にボート本体を自然流下させることによって、データから判断することができる。
・波浪による動揺の影響を軽減させるのと合わせて、陸上からの通信が遮断されずに測線上を走行するためには、波高の小さい条件下(計算上では波高1m以下)での使用が望ましい。
・自然条件(波高、傾斜)によって本体装備の音響測深機を指向角6°のものと24°のどちらかを選択することが可能であり、従来の音響測深機の選択と同様に測量技術者が最適の測深が行えるよう判断する。
・波高1mについて関係基準として水路測量関係規則集(P78,2-7-5資料整理(3))に以下の記述がある。
「波浪の影響により海底の音響測深記録が凹凸を呈した場合、砂泥質の自然海底に限って、海底記録の相隣れる凸(浅)部と凹(深)部との水深差が1メートル以内のときは、その1/3を凸部の水深に加えた値を海底の水深とすることができる。」
A現場条件
・無線LANの電波通信(距離間500m)が確保されている。
B技術提供可能地域
・全国の河川・ダム・湖沼、海岸、港湾
C関係法令等
・公共測量作業規定、河川定期縦横断測量実施要領・同解説、水路測量関係規則集 |
適用範囲 |
@適用可能な範囲
・水域部(流速2m/秒以下)
A特に効果の高い適用範囲
・水深1〜3mの浅所部
B適用できない範囲
・陸上部、水深80m位深の水域部、流速2m/秒以上の水域部、極度に波浪の大きい(2m以上等)水域部
C適用にあたり、関係する基準およびその引用元
・河川定期縦横断測量実施要領・同解説、水路測量関係規則集 |
留意事項 |
@設計時
・あらゆる水域フィールドにおいて、従来技術では水深3mより浅い区域の計測に多大な労力を要してきた。本技術では、特に水深1〜3mで最大の効果が得られるが、水深3mより深いフィールドでは、現場条件により従来技術のほうが船速(=効率面)で有利となることもある。このため、作業計画段階において、対象フィールド及び計測手法の特徴を踏まえた計画の立案により、計測手法の選択を行うことが必要と考える。
・現地作業を行うにあたり、測深誤差の要因となる自然条件(特に波浪、流速、地形傾斜)について事前に確認し、最適な音響測深機指向角(6°か24°)の選択をする必要がある。
A施工時
・遠隔操作距離が最大500mであるため、操作する場所の確保が必要である。
・波浪によるリモコンボート動揺の影響は、指向角24°のものを選択することによって誤差の軽減が図れるが、記録データは誤差を完全には除去できないため、処理過程において適切な凹凸補正処理を行う必要がある(従来技術と同様)。
B維持管理等
・本体および操作ソフトの耐久年数は具体的には無いが、1年に1度程度で正常動作するかどうかのメンテナンスが必要である。
Cその他
・特になし |