概要 |
@何について何をする技術なのか?
道路の中央分離帯・路側帯、公園の緑地帯、水路の法面等に対して、防草土とヒメイワダレ草の活用により、雑草の抑制と修景の緑化を両立する工法。
A従来はどのような技術で対応していたのか?
・防草工(マットタイプ)
中央分離帯及び路側帯の除草対策として防草効果のあるシートを使用していたため、自然な景観の維持が不十分であった。
B公共工事のどこに適用できるのか?
・道路の中央分離帯及び路側における防草工(マットタイプ)
・公園や広場における地被類植付工
・水路の法面における防草工(マットタイプ)
Cその他
●防草土の概要・特徴
・浄水沈殿汚泥(80.6%)、瓦骨材(11.1%)、石灰系固化材(8.6%)からなる。
・産業廃棄物である浄水沈殿汚泥を活用するため、リサイクルに貢献する。
・浄水沈殿汚泥は栄養素に乏しく、また石灰系固化材を使用するためアルカリ性土壌である(施工直後pH11程度、経時によりpHは中性に近づく)。
・生石灰が土中水分と反応することで消石灰となり、さらに土中のシリカやアルミナ等の成分と反応してカルシウム化合物を形成することで固結するため、長期的に土壌の流出を防ぐ効果がある。
●ヒメイワダレ草の概要・特徴
・本植物は草丈5cm程度で根は地中30〜60cmまで伸びる多年性の地被植物である。
・本植物は毎年5月上旬から9月にかけて花を咲かせるが種子は結実せず、匍匐茎の各節から分枝・発根して地表を密に被覆する。
・繁殖力が強く、雑草の生育を抑制する。
・pH適応幅は4〜12と他の一般的な植物と比較して広い(一般的な雑草のpH適応幅は4.5〜7.5程度)。
・アレロパシー(※)により、他の植物の生育を抑制する性質を持つ。
※アレロパシー
他感作用。微生物を含む植物相互間の生化学的な関り合いを指す。化学物質により引き起こされるものであり、「競合」とは異なる。
・クマツヅラ科の植物であり、イネ科やマメ科を餌とするカメムシが発生しにくい。
本工法ではヒメイワダレ草をポットの段階から防草土を使用して育成するため、防草土への活着後における植付箇所からの雑草発生は抑制される。
●申請技術の評価等について
本工法は、「防草緑化工法」として石川県建設新技術に登録されている(登録番号第9号(2011年5月16日認定))。
<参考URL>
http://www.pref.ishikawa.jp/gijyutsu/singijyutu/list2.html
 防草緑化工法断面図 |
新規性及び期待される効果 |
@どこに新規性があるのか?(従来技術と比較して何を改善したのか?)
・道路の中央分離帯及び路側帯等における防草工(マットタイプ)では、防草効果のあるシートをピンで固定していたが、本工法では防草土を盛土(t=10cm)し、さらにヒメイワダレ草を4ポット/uの間隔で植栽する。
A期待される効果は?(新技術活用のメリットは?)
・ヒメイワダレ草が面全体を被覆するまでの期間は、防草土の効果により表層が貧栄養かつアルカリ性となるため、雑草の発生・生育を抑制する。また、ヒメイワダレ草の面全体被覆後は、防草土の固結による防草効果に加え、ヒメイワダレ草が匍匐茎の各節から分枝して地表を密に被覆し地中にも根が密集することで、雑草の発生・生育が抑制される。これにより、一般的な耐用年数が5〜10年程度である防草シートと比較して、長期間(防草土のみでは12年間、防草土+ヒメイワダレ草では3年間の施行実績)における雑草の発生・生育を抑制できる。また、防草工をシート・マットタイプの人工物からヒメイワダレ草による植栽工に変更することにより、景観が向上する。
・マットタイプの防草工では風等の影響でシートがめくれ、防草効果が喪失するケースが見られるが、本工法ではシートを使用しないため防草効果喪失のリスクを低減させることができる。
・マットタイプの防草工では、通気性・透水性が不十分であることによって「砂漠化」しやすく、風による砂の巻上げや雨による流出等のおそれがある。一方、本工法ではヒメイワダレ草が密生し、防草土も透水性であるため、「砂漠化」が起きず、砂の巻上げや流出を防ぐことができる。
・防草シートは二酸化炭素を吸収しないが、ヒメイワダレ草は二酸化炭素を吸収するため、温暖化対策としての効果が期待できる。
 防草緑化工法施工例(施工後3年経過時点) |
適用条件 |
@自然条件
・雨天時の施行は避ける。
A現場条件
・重機の設置及び作業スペースとして、半径2m程度が確保されていること。
B技術提供可能地域
・最低気温マイナス20度以上の地域。
(ヒメイワダレ草の生育限界が概ねマイナス20度であるため)
C関係法令等
・水質汚濁に係る環境基準 別表2「生活環境の保全に関する環境基準」(環境省、平成25年改訂) |
適用範囲 |
@適用可能な範囲
・1:1.0より緩勾配。
A特に効果の高い適用範囲
・法面等といった維持管理が困難な場所。
B適用できない範囲
・一日中日光が当たらない場所
ヒメイワダレ草が十分に生育するためには日光が必要であるため。
・水中・湿地帯
ヒメイワダレ草は水はけの良い土壌を好むため。
C適用にあたり、関係する基準およびその引用元
なし |
留意事項 |
@設計時
・ヒメイワダレ草はpH4以下の強酸性土壌では生育しにくいため、土壌pHについて要確認。
A施工時
・施工箇所については、事前の雑草除去が必要である(更新時のみ)。
・7月末から9月初旬の乾燥時期に施工した場合は、定植後完全に根が活着するまでの1週間程度、夕刻に水やりを行い乾燥を防ぐ必要がある。
B維持管理等
・地中からの雑草は抑制されるが、飛来雑草の抜き取り作業が必要となるため、年1回程度の定期的な維持管理を実施する。
Cその他
・日陰ではヒメイワダレ草の生育が遅れる。
・ヒメイワダレ草の生育期間は3〜10月であるため、11〜2月の冬季に植栽した場合は3月以降に面全体への生育が開始する。そのため、3月にヒメイワダレ草を植栽した場合は約半年で面全体を被覆するが、冬季に植栽した場合は面全体を被覆するまでに最長1年程度を要する。
・雑草の生育状況に関して、防草土のみの施行に関しては12年間の防草効果維持が確認されている。また、防草土とヒメイワダレ草を併用した場合に関しては3年間の防草効果維持が確認されている。 |