概要 |
@何について何をする技術なのか?
地山を垂直勾配で掘削し、プレキャストコンクリートパネル(以下「パネル」という。)と補強材で掘削面を補強し、本設の垂直勾配の地山補強土を構築する技術である。
本技術は、表面工としてパネル(標準:H=1.2m×W=1.8m)を使用し、補強材(特殊加工した異形棒鋼:2m〜10m程度)を地山に挿入することで切土法面(地山)および不安定化した掘削面の崩壊を防止する。
施工方法は、上から順に構造物を構築する「逆巻き施工」を基本としている。
掘削面上部の土塊をパネルと補強材で安定させているため、その下部の掘削面の安定が確保できる。(写真-1)
A従来はどのような技術で対応していたのか?
逆T型擁壁+仮設土留め工
擁壁設置箇所の背面を安定勾配(1:0.5程度)で掘削し仮設法面を設ける、もしくは仮設土留めを設けてから擁壁を施工する技術である。
B公共工事のどこに適用できるのか?
・ 道路拡幅工事
・ 道路新設工事
・ 急傾斜地崩壊対策工事
・ 擁壁改修工事
・ 災害復旧工事 など
 写真-1 断面図と垂直施工の様子 |
新規性及び期待される効果 |
@どこに新規性があるのか?(従来技術と比較して何を改善したのか?)
基本段(最初に施工する段)の補強材には、基本段のパネルと裏込め材の重量に加えて次段パネルの重量が作用するため、次段掘削後にパネルが沈下する懸念がある。
パネルの沈下対策として、基本段のパネル背面に基段補助杭を設置し、かかる重量を分散することによりパネルの沈下を防止できたため、次段を垂直勾配で掘削することが可能となった。
それにより、従来技術で必要な仮設法面や仮設土留めを無しで本設の垂直壁を構築できるようになった。
A期待される効果は?(新技術活用のメリットは?)
・ 改変面積が最小限で済み、森林・緑地など施工箇所の環境に与える影響が少ない。
・ 道路の谷側拡幅工事や路肩崩壊などの災害復旧工事において、交通規制が最小限で施工できる。
・ 表面工のパネルはプレキャスト製品のため、工期短縮・省力化、また、品質に優れているとともに、表面のデザイン(擬岩模様)は景観に配慮している。
・ 逆巻き施工を標準とするため、高所作業が削減され、安全性が高い。
 図-1 パネル沈下防止 |
適用条件 |
@自然条件
特になし。
A現場条件
削孔重機用足場として、土足場もしくは仮設足場が必要(W=4m以上)。
B技術提供可能地域
日本全国。
C関係法令等
特になし。 |
適用範囲 |
@適用可能な範囲
・ 適用可能な想定崩壊規模 : 小規模〜中規模程度の崩壊に対して適用が可能である。
・ 適用地盤 : 地山補強土が適用できる地盤
例 : 硬岩、軟岩、砂礫、砂質土、粘性土などの自然地盤、
・ 適用高さ : 原則最大20m
ただし、壁高20mを超えるものについては、検討により安全性の確保ができれば施工することが可能である。
A特に効果の高い適用範囲
・ 計画壁面の上部背面に建物・埋設管・道路・境界等があり、構造物掘削ができない箇所。
・ 一般的な擁壁や切土では、長大法面となる箇所。
B適用できない範囲
・ 地すべり等の大規模崩壊の対策には適用できない。。
・ 周面摩擦抵抗の発揮が困難な軟弱地盤や粘性土地山、粘着力しか期待できない比較的軟らかい粘性土が均一に分布する地山、化学的性質に問題がある地盤は、検討により安全性を確認する必要がある。
C適用にあたり、関係する基準およびその引用元
・ 表面工にプレキャストコンクリート板を用いた地山補強土工法(PAN WALL工法)に関する技術評価報告書、(公社)土木学会、平成25年11月
・ 道路土工-切土工・斜面安定工指針、(社)日本道路協会、平成21年6月
・ 切土補強土工法設計・施工要領、東日本・中日本・西日本高速道路株式会社、平成19年1月
・ 地山補強土工法設計・施工マニュアル、(公社)地盤工学会、平成23年8月
・ 2012年制定 コンクリート標準示方書 施工編、(公社)土木学会、平成25年3月
・ 2012年制定 コンクリート標準示方書 設計編、(公社)土木学会、平成25年3月 |
留意事項 |
@設計時
詳細設計に際しては、地盤定数(N値、粘着力C、内部摩擦角φ、単位体積重量γ)が必要である。
その他の条件や安定性の検討などについては、表面工にプレキャストコンクリート板を用いた地山補強土工法(PAN WALL工法)に関する技術評価報告書のうち、「PAN WALL工法 設計・施工指針」に準ずる。
A施工時
施工は、PAN WALL工法協会が指定する技術講習を修了した者が行う。
確認試験(補強材が引き抜けないことの確認)を行う。
施工方法や試験方法については、表面工にプレキャストコンクリート板を用いた地山補強土工法(PAN WALL工法)に関する技術評価報告書のうち、「PAN WALL工法 設計・施工指針」に準ずる。
B維持管理等
構築された補強土(垂直壁)がその機能を十分に果たしているかどうかを確認するため、定期的に目視による点検を行うものとする。
補強土(垂直壁)や周辺に変状が見られた場合には、必要に応じて補強材の増し打ちなど適切な対策を講じる。
Cその他
その他詳細については、「表面工にプレキャストコンクリート板を用いた地山補強土工法(PAN WALL工法)に関する技術評価報告書」、(公社)土木学会、平成25年11月
(土木学会 技術推進ライブラリーNO.14)
を参照すること。 |